
アボリジナルの原住民と世界各国の移民で成り立っているオーストラリアの公用語は、いったい何語なのと思ったことはありませんか?
さらに、オーストラリア英語は訛りがひどくて、何を言っているか分からないって本当?
せっかく英語を勉強しても、オーストラリア訛りがついたら将来不利になるんじゃ…
留学や移住を考えたとき、こんな不安を抱く人は多いはずです。
そこで、この記事では、イギリスとオーストラリア両国に10年以上住んだことのある筆者が、オーストラリアの言語事情と訛りのリアルについて赤裸々にお伝えしていきます。
本題に進む前に結論を述べておくと、オーストラリアの公用語はオフィシャルには存在しませんが、英語が共通語として話されています。
オーストラリア人の訛りは一概に強いとは言えず、場所によってはクイーンズイングリッシュに近いアクセントをしていたり、田舎の方ではかなりキツイ訛りがあったりしますよ。
詳しくは、記事本文で解説するので、ぜひ、このまま読み進めてくださいね。
この記事を書いた人

しずか
TOEIC975点持ち / 元大手オンライン英会話講師
イギリス在住歴15年を経て、オーストラリアへ移住。
ロンドン仕込みの英語力があれば余裕だと思っていたが、現地の「Broad Accent」の洗礼を受け、自信を喪失した経験を持つ。
現在は「訛り」への恐怖をコミュニケーションスキルで克服し、オーストラリア現地の会社で就労中。
目次
オーストラリアの公用語は何語?多民族国家の言語事情を解説!

まず最初に、多くの人が疑問に思う「オーストラリアは何語を話す国なのか」という点について解説します。
驚くべきことに、オーストラリアには憲法で定められた法的な公用語は存在しません。
もちろん、行政や教育、ビジネスの現場では事実上の公用語として英語が使われていますが、法律で「英語が唯一の公用語である」と規定されているわけではないのです。
なぜ公用語を定めないのか?
「公用語なし」という現状と、オーストラリアが掲げる「多文化主義(Multiculturalism)」には深い因果関係があります。
オーストラリアは移民によって成り立っている国です。
政府があえて公用語を定めないのは、多様なバックグラウンドを持つ移民たちの言語や文化を尊重し、特定の言語だけを優遇しないという姿勢の表れでもあります。
実際、オーストラリア統計局(ABS)のデータを見ると、その多様性は一目瞭然です。
2021年の国勢調査によると、オーストラリアの家庭で英語以外の言語を使用している人の割合は22.3%(約550万人)に達しています。
出典: Cultural diversity: Census - Australian Bureau of Statistics, 2021
つまり、街を歩けば5人に1人は家庭で英語以外を話している計算になります。
マンダリン(中国語)、アラビア語、ベトナム語など、様々な言語が飛び交うのがオーストラリアの日常なのです。
<strong>専門家の経験からの一言アドバイス</strong>
「私の英語は完璧じゃないから恥ずかしい」と思う必要は1ミリもありません。
なぜなら、オーストラリア社会は「訛りのある英語」を聞くことに慣れきっているからです。
相手も移民であれば、お互いに片言の英語で助け合うことも日常茶飯事。
「公用語がない」という事実は、あなたの英語が完璧でなくていいという証明なのです。
オーストラリアで一番話されているのは何語?英語以外の言語の割合をご紹介
| 順位 | 言語 | 割合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 英語 | 72.0% | 事実上の公用語 |
| 2 | マンダリン(中国語) | 2.7% | アジア圏からの移民が増加 |
| 3 | アラビア語 | 1.4% | 中東地域からのコミュニティ |
| 4 | ベトナム語 | 1.3% | 歴史的な移民背景を持つ |
| 5 | 広東語 | 1.2% | 香港・中国南部からの移民 |
| 補足: 日本語を話す人口も約7万人存在します。 | |||
オーストラリアには、イギリス人が入植するずっと前から、アボリジナルやトレス海峡諸島民と呼ばれる先住民(First Nations people)が住んでおり、かつては250以上の独自の言語が存在していました。
現在でも一部の言語は継承されています。
ゴールドラッシュの頃には沢山の中国人がオーストラリアに移住した事から、なんでこんなアウトバックに?と言うような田舎に完全オジー化した中国人が住んでいたり、華僑の博物館があったりするんですよ。
さらに、戦後の移民政策により世界中から人々が集まった結果、街中では多様な言語が飛び交っています。
豪州の政府関連や公共施設では無料通訳サービスあり!英語が話せなくても生きていける?
「英語が聞き取れなかったら、病院や役所でどうすればいいの?」という不安がある方に朗報です。
オーストラリアには、英語が苦手な人のためにTIS National (Translating and Interpreting Service) という政府運営の通訳サービスがあります。
- 病院、警察、税務署(ATO)、光熱費の契約など、生活に関わる多くの場面で利用可能。
- 原則無料(サービス提供側が費用を負担する場合がほとんど)。
- 電話一本で、日本語を含む150以上の言語の通訳者がサポートしてくれます。
「英語ができないと門前払い」ではなく、「英語ができなくても権利を守る」という仕組みが整っているのが、オーストラリアという国の懐の深さなのです。
筆者の友人で駐在の奥さんとしてオーストラリアに住み始めた女性は英語が一切話すことが出来ませんでした。
彼女はオーストラリアで出産をしましたが、病院のレギュラーチェックでは、ほぼ毎回無料で通訳サービスが提供されていたようです。
通訳がつかない時や、出産の時はスマホの翻訳アプリで乗り切ったと言っていましたよ。
「訛りがひどい」は誤解?オーストラリア英語の3つの階層を解説!

さて、オーストラリアの公用語な何語?と言う疑問を解決した後は、本題の「訛り(アクセント)」について詳しく見ていきましょう。
ちなみには筆者は、オーストラリアに来る前はイギリス・ロンドンに15年以上住んでいました。
英語には自信がありましたし、耳も完全に英語耳になっていると思っていました。
しかし、オーストラリアに移住した初日、空港のタクシー運転手の言葉が全く聞き取れなくて愕然としたのです。 「え、これ本当に英語?」とパニックになったのを今でも覚えています。
私が移住当初、タクシー運転手の英語が分からなかったのには理由があります。
それは、オーストラリア英語には明確な「3つの種類」があるからです。
すべてのオーストラリア人が、映画『クロコダイル・ダンディー』のようなコテコテの訛りを話すわけではありません。
オーストラリア英語の階層① :Cultivated accent(カルティベイティッド・アクセント)
最も上品で、教養が高いとされるアクセントです。
イギリス英語の容認発音(RP)に非常に近く、私がロンドンで聞いていた英語とほとんど変わりません。
しかし、現在これを話す人は人口の10%程度と少数派です。
アデレードやシドニーに、このアクセントで話す人が多い印象です。
オーストラリア英語の階層② :General accent(ジェネラル・アクセント)
現在のオーストラリアで最も一般的なアクセントです(約80%)。
シドニーやメルボルンなどの都市部で生活する場合、耳にするのはほとんどこのタイプです。
「訛り」はありますが、アメリカ英語やイギリス英語に慣れている人なら、少しの慣れで十分に聞き取れるレベルです。
また、主要都市にはイタリア系移民や2世の若者達が話す英語のアクセントは、伝統的なオジーアクセントとは異なった特徴的な話し方をしますよ。
オーストラリア英語の階層③ :Broad accent(ブロード・アクセント)
これがいわゆる「オーストラリア訛り」のステレオタイプです。
地方(アウトバック)や、ブルーカラーの労働者層によく見られます。
母音が極端に伸びたり変化したりするため(例:DayがDieに聞こえる)、慣れていないとネイティブでも聞き取るのが難しいことがあります。
私が移住当初ゴールドコーストに住んでいた時の仕事は、ローカルのオジーと電話で話す必要がありましたが、電話でオーストラリアのブロードアクセントを理解するには、本当に苦労しました。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「オーストラリア英語=ひどい訛り」というのは、一部のBroad accentを誇張したイメージに過ぎません。
都市部で留学や仕事をする限り、あなたが接する英語の8割は聞き取りやすい「General accent」です。過度に恐れる必要はありません。
オーストラリア・イギリス・アメリカの英語の違いをチェック!
| 単語 | アメリカ英語 の発音/意味 | オーストラリア英語 の発音/意味 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Day | デイ | ダイ | 「エイ」が「アイ」に変化する代表例 |
| Mate | メイト(友達) | マイト | 挨拶で頻繁に使われる。「Friend」より一般的 |
| Today | トゥデイ | トゥダイ | 「今日」が「死ぬ」に聞こえるので注意 |
| Centre | Center(センター) | Centre | イギリス英語の影響でスペルが異なる(reで終わる) |
| Tomato | トメイトゥ | トマート | 「a」を「アー」と伸ばす傾向がある |
「公用語がないなら、オーストラリア語という独自の言語があるの?」と聞かれることがありますが、「オーストラリア語」という別の言語は存在しません。
彼らが話しているのは間違いなく英語です。
ただし、オーストラリア英語と、私たちが学校で習った標準的なアメリカ英語やイギリス英語との間には、発音や語彙において明確な違いがあります。
この違いこそが、多くの日本人が「聞き取れない」と感じる原因です。
ポイント
私が凍りついた「エイ」→「アイ」の法則
私が渡航した初日、カフェの店員さんに笑顔でこう言われました。
「Have a good die!」
私は一瞬、「えっ、良い死を(Good die)…?」と耳を疑いました。
しかし、これはオーストラリア英語特有の「エイ(ay)」という母音が「アイ(ie)」に変化する発音ルールによるもので、実際は「Have a good day!」と言っていたのですね。
このように、オーストラリア英語と標準英語は文法こそ同じですが、母音の発音ルールが異なるため、最初は全く別の言葉のように聞こえることがあります。
しかし、ルールさえ知ってしまえば、恐れることはありません。以下の比較表で、代表的な違いを確認しておきましょう。
専門家の経験からの一言アドバイス
最初は聞き取れなくても、自分を責めないでください。それは英語力の問題ではなく、単なる「耳の慣れ」の問題です。
なぜなら、ネイティブスピーカーであるアメリカ人でさえ、オーストラリア英語の強い訛りには戸惑うことがあるからです。1ヶ月も生活すれば、「ダイ(Day)」という響きが自然と心地よく聞こえるようになりますよ。
また、単語でもオーストラリア、イギリス、アメリカで異なったものを使う場合があるので、以下の表にまとめておきますね。
| 日本語 | アメリカ英語 (US) | イギリス英語 (UK) | オーストラリア英語 (AU) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| フライドポテト | Fries | Chips | Hot chips | 薄いのはChips、熱いのはHot chips |
| エレベーター | Elevator | Lift | Lift | 豪は英単語寄り |
| ガソリンスタンド | Gas station | Petrol station | Servo | Service stationの略(超頻出!) |
| ビーチサンダル | Flip-flops | Flip-flops | Thongs | 米国でThongsは下着を指すので注意! |
| 午後 | Afternoon | Afternoon | Arvo | 「This arvo(今日の午後)」と使う |
| 女の子のパンツ | underwear | knicker | jocks | オーストラリアでknickerと言う人も |
| ズボン | pants | trousers | pants | 日本のパンツと混同しないように |
特に「Thongs(ビーチサンダル)」は要注意です。アメリカ人に「I bought new thongs(新しいTバック買ったんだ)」と言って誤解されないようにしましょう(笑)。
英語力ゼロでも愛される?魔法の「オージースラング」3選!

オーストラリア英語の特徴として、発音と同じくらい重要なのが「スラング(短縮語)」の多用です。
ここで覚えておいてほしいのは、スラングは単なる若者言葉ではなく、オーストラリアにおけるコミュニケーションの潤滑油であるという関係性です。
現地の人々は、言葉を短くすることで親しみを表現します。
英語力に自信がない人こそ、以下の3つの魔法の言葉を使ってみてください。これだけで、現地の人との距離がグッと縮まります。
スラング
G'day(グダイ)
「Good day(こんにちは)」の短縮形です。「Hello」よりもフレンドリーな響きがあります。お店に入った時や、ホストファミリーに会った時、笑顔で「G'day!」と言ってみましょう。
スラング
Ta(タ)
「Thank you」の超短縮形です。スーパーのレジでレシートを受け取る時や、バスを降りる時に「Ta!」と軽く言うだけで、あなたはもう「観光客」ではなく「現地に馴染んでいる人」に見られます。
スラング
Ta(タ)
No worries(ノーウォーリーズ)
これはオーストラリア精神そのものを表す言葉です。「You're welcome(どういたしまして)」や「That's okay(大丈夫だよ)」の代わりに使われます。
「ありがとう」と言われたら「No worries!」。
「ごめんね」と言われたら「No worries!」。
この一言で、どんなトラブルも笑顔に変えられます。
オーストラリア英語に関するよくある質問3つにお答え!
最後に、私がコーディネーターとして最も頻繁に受ける質問にお答えします。
あなたの「今の英語力で現地で暮らしていけるのか」について、本音でお話しします。
Q1. アメリカ英語で話してもいいですか?
もちろん大丈夫です!
オーストラリア人はアメリカ映画やドラマをよく見ているので、アメリカ英語は100%通じます。無理にオーストラリア訛りを真似する必要はありません。
ただ、先ほど紹介した「Ta」などを少し混ぜると、「私たちの文化を尊重してくれているんだな」と喜ばれます。
Q2. 聞き取れなかった時、どうすればいいですか?
堂々と「Sorry?」と聞き返しましょう。
これが一番大切です。多文化社会のオーストラリアでは、ネイティブ同士でも聞き返すことがよくあります。
聞き返すことは失礼でも恥でもありません。分かったふりをして愛想笑いをする「沈黙」の方が、コミュニケーションにおいてはマイナスになります。
Q3. 語学学校には行くべきですか?
英語力アップだけでなく、「仲間作り」のために行くことを強くおすすめします。
語学学校には、あなたと同じように「英語が不安」「仕事が見つかるか心配」という悩みを持つ世界中の若者が集まっています。
そこで出会う仲間は、異国での生活を支え合う一生の友になります。英語はツールですが、それを支えるのはマインドセットと仲間です。
オーストラリア訛りがつくと、将来不利になる?
「オーストラリアで英語を覚えると、綺麗なアメリカ英語が話せなくなるのでは?」
「就職活動で『訛っている』と評価が下がるのでは?」
これもよくある質問ですが、結論から言うと「全く不利にはなりません」。 むしろ、現代のグローバル社会ではプラスに働くことさえあります。
理由1:そもそも「Broad Accent」は簡単には身につかない
安心してください。あの独特なBroad accentは、現地で生まれ育った人が長い時間をかけて習得するものです。
留学生が数年住んだ程度で、あそこまで強い訛りが染み付くことはまずありません。
あなたが身につけるのは、「少しオーストラリア風味のある、聞き取りやすい国際標準英語」です。
理由2:世界は「World Englishes」の時代
今や英語を話す人の大半は非ネイティブです。ビジネスの現場では、インド訛り、シンガポール訛り、ヨーロッパ訛りの英語が飛び交っています。
「アメリカ英語しか聞き取れない・話せない」人よりも、「オーストラリア英語のような特徴的な英語も理解し、適応できる」人の方が、コミュニケーション能力が高いと評価されます。
理由3:オーストラリア英語は親しみやすさの武器
オーストラリア英語のイントネーション(語尾が上がるHigh Rising Terminalなど)は、相手に「フレンドリーで話しやすい」という印象を与えます。これは接客業やチームワークにおいて大きな武器になります。
まとめ:オーストラリアの公用語は何語?英語の訛りはチャームの1つ
オーストラリア英語には確かに訛りがあります。イギリスに15年住んでいた私でさえ、最初は戸惑いました。
しかし、その訛りや独自の言葉(スラング)は、オーストラリア人の「飾らない人柄」や「仲間意識(Mateship)」の表れでもあります。
- 公用語がない=多様性への寛容さ
- 訛りがある=気取らないフレンドリーさ
- 通訳制度がある=誰一人取り残さない社会
「訛りがついたらどうしよう」と心配して殻に閉じこもるよりも、「G'day!(やあ!)」と現地の言葉を使って飛び込んでみてください。
その瞬間、訛りは言葉の壁ではなく、現地の人々と心を通わせるための「扉」になるはずです。
あなたのオーストラリア生活が、彩り豊かな言葉と出会いで満たされますように!
参考文献
- Cultural diversity: Census - Australian Bureau of Statistics, 2021
- Free Interpreting Service - TIS National
- Australian English varieties - Macquarie University